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Online edition:ISSN 2758-089X

臍帯血移植後発症したearly lesion of PTLD の剖検例

移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorders, PTLD)は,同種造血幹細胞移植後の生命を脅かす予後不良な合併症の一つである.臨床症状は非特異的であるが,PTLD を疑った場合はPCR 法による血中EB(Epstein-Barr)ウイルス-DNA 量を測定し,高値を示した場合はPTLD と判断する必要がある.今回,造血幹細胞移植後に高EB ウイルス血症を認め,急激な病状の悪化により死亡した症例を経験したため剖検所見を含め報告する.症例は,40歳代男性でフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病を発症し,治療にて寛解を得た後に臍帯血移植を施行した.移植後280日に高熱が出現し,胸部CT 検査から細菌性肺炎と診断し入院.抗菌薬治療を開始するも効果不良であり,呼吸状態の悪化と,意識障害が出現した.血液,肺胞洗浄液と髄液から,EB ウイルス-DNA 異常高値が検出された.PTLD と判断したが,急激に呼吸状態が悪化し死亡した.剖検では,肺胞内出血を認め,急激に悪化した原因と考えられた.そして,肺門部リンパ節や肺にはEBER(EBV-encoded small RNA)陽性細胞を多数認め,一部では大型多核細胞も散見され,early lesion of PTLD と判断された.Early lesion of PTLD であっても,本症例のように肺病変を認めた場合,出血による呼吸状態の悪化から急激な経過をたどることがあり,早期の対応が必要と考えられた.
著者名
佐野史典, 他
43
1
63-68
DOI
10.11482/KMJ-J43(1)63
掲載日
2017.6.21

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