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レセプター特異性の違いはトリインフルエンザウイルスのヒトへの感染を防ぐバリアとして機能しうるか

 鳥類の間では膨大な種類のインフルエンザウイルスが行き交っており,新型ウイルス発生の重要な源になっているが,トリのインフルエンザウイルスは容易にヒトに感染しないのは,レセプター特異性の違いが大きなバリアとなっているためと考えられている.則ち,レセプターとしてトリのインフルエンザウイルスはα2,3結合型シアロ糖鎖(SAα2,3)を,一方,ヒトのウイルスはα2,3結合型シアロ糖鎖(SAα2,6)を認識するが,ヒト上気道細胞にはSAα2,3(言わばトリ型レセプター)がほとんど存在しないため,トリのウイルスはヒト細胞に吸着侵入できないと言う考え方である.しかし強毒型トリインフルエンザの感染で多数の死者が出ていることに加え,最近,SAα2,3の存在がヒト呼吸器上皮でも報告されており,この考え方の再検討が必要になってきた.本研究ではヒト呼吸器上皮由来のA549細胞と弱毒型トリインフルエンザウイルスを用いて,レセプターとウイルスの吸着侵入の関連を解析し,ヒトA549細胞上には大量のSAα2,6に加えて少量のSAα2,3も存在すること,用いた3種のトリインフルエンザウイルスは細胞上に少量存在するレセプターを利用して細胞に侵入し,ウイルス抗原の合成を開始する能力を持っていること,しかしその効率(能力)はウイルス間で大きな差があること,を明らかにした.従って“ウイルスのレセプター特異性の違いと細胞におけるレセプターの偏在”が形成するバリアは厳密なものではなく,ウイルスの種類によっては容易にバリアを乗り越える可能性が示された.(平成21年9月2日受理)
著者名
栗原 武幸
35
4
307-318

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