h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

心電図上一過性の著明なST・T異常を反復して認めた高滲透圧性非ケトン性昏睡の1例

52歳の女子,1974年1月28日半昏睡状態で当院へ入院した.入院3週間前より次第に体重減少,口渇,食欲不振となり,最後に意識障害が起った.入院時,血糖1,518mg%,血清Na 151, K 4.6,Total C02 17.5mEq/L, pH7.20,赤血球数537万/mm3, Ht 51%,BUN 88 mg%であった.尿ケトン体陰性,血漿ケトン体(+)であった.心電図上V2-3で著明なST上昇とⅡ,Ⅲ,aVF,V3-6で巨大陰性Tを認め急性冠不全の合併も考えられた.低張液の輸液とレギュラーインスリンによる治療4時間後にST-T異常の改善が始まり,第6病院日には殆んど正常化した.その間GOT,CPKの一過性上昇を見たが,胸痛その他で血管系の症候や異常所見はなかった.脳波及び臨床所見から器質的脳疾患を思わせる異常はなかった.1年後糖尿病が増悪したとき全く同様の心電図の変化を一過性に認めた.このようなST-T異常は代謝異常,とくにカテコラミン遊出などを主とした心筋障害である可能性が強い.
著者名
中島 行正, 他
2
1
45-52
DOI
10.11482/KMJ-J2(1)45

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