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うつ病の治療中にアカシジアとジスキネジアを呈した一例

症例は60歳代男性,15年前より当科にてうつ病,アルコール依存症として治療していた.2年前より町内会の仕事で多大なストレスを感じ,1年前より身体不調から仕事を退職した.その後,過剰な飲酒が始まり,精神科病院に入院しアルコール依存症の治療が行われ,その際にオランザピンが投与された.その後は断酒ができていたが,町内会での大きな役割が回ってくる不安感からイライラ感が強くなり,オランザピンの増量,クロルプロマジンへの変更などを行ったが精神症状は改善せず,薬剤変更1ヶ月後より終日じっとしていられないアカシジア様症状と,舌が勝手に動く口舌ジスキネジア様症状,首下がり症状が出現した.抗精神病薬を中止したが症状改善せず,次第に食事摂取困難となり体重が減少,状態悪化のため当科入院となった.入院後,薬剤調整による抗うつ治療を行ったが改善なく,希死念慮の増悪を認めたため修正型電気けいれん療法(modified-electroconvulsive therapy: m-ECT)の適応と考えられ,全13回のm-ECT を施行した.m-ECT 施行により精神症状,アカシジア,ジスキネジア,首下がりが徐々に改善し,最終的には病状が著明に改善した.本症例のジスキネジアは薬剤性としては発現が急であり,また首下がりの症状を伴っていたため,パーキンソン病の存在が疑われた.頭部MRI,ドパミントランスポーターシンチグラフィでは異常はなかったが,MIBG 心筋シンチグラフィではFDG 集積の低下を認めた.入院時軽度の左右差のあるパーキンソニズムがあり,筋電図にて頸部伸展筋ミオパチーと診断された.以上から身体症状の原因は,臨床症状発現前のパーキンソン病を背景とする抗精神病薬の副作用であると考えられた.アカシジア,ジスキネジアは薬剤性に起因するものが多数であるが,その他の疾病の有無を注意深く観察することが必要であると考えられた.
著者名
白形鷹博, 他
43
2
129-136
掲載日
2017.12.6

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