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手術侵襲下での生体内におけるNF-κBの動向とその役割

 NF-κB(Nuclear factor κB)は,生体のさまざまな機能に関与し,恒常性を維持するための重要な転写因子である.本研究では,消化器癌手術のなかで最も侵襲の大きい開胸開腹術という手術侵襲を受けた際の,ラット正常組織内NF-κB の変動について,対照群(麻酔のみ),開腹群(L群),開胸開腹群(T+L 群)の3群について比較検討した.検索対象組織には肝臓,肺,脾臓を用いた.免疫組織染色ではT+L 群のみでNF-κB 陽性細胞を認め,特に肺組織の術後60,120分で最も高い陽性率を示した.さらに,術後120分での肝臓組織において,ウエスタンブロット法によりNF-κB の活性化を確認した.Real-time RT PCR 法では,T+L 群がL 群に比べNF-κB mRNA の増加ピークが遅延していた.また,肺でのNF-κB mRNA 発現量が最も多かった.開胸開腹という過大な侵襲が加わることにより,特に肺におけるNF-κB の産生が過剰となり,さまざまな炎症反応を惹起するきっかけとなり,術後呼吸器合併症の誘因となると同時に,癌細胞の着床を促進する可能性が考えられた.(平成21年4月28日受理)
著者名
三上 佳子
35
2
147-157

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