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Online edition:ISSN 2758-089X

内視鏡的ドレナージが有効であった胃壁膿瘍を合併した胃迷入膵の1例

症例は30歳代女性.3日前から心窩部痛が出現し,徐々に増悪してきたため当院を受診した.血液検査でWBC 15,120/μl,CRP 2.95mg/dl と炎症反応上昇を認め,腹部超音波検査で胃幽門前庭部前壁に約3.5cm の粘膜下腫瘍様隆起を認めた.腫瘍内部はechogenic particles の混在する液体の貯留を認めた.腹部造影CT 検査では,胃前庭部から胃体部前壁にリング状の造影効果を伴う著明な壁肥厚を認めた.以上より胃壁膿瘍と診断した.胃前庭部前壁の弾性硬のやや発赤した粘膜下腫瘍様隆起に対して,超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)を行った.粘稠な白色液体の流出を認め,膿瘍を示唆する所見であった.絶食・点滴・抗生剤投与による保存的加療を施行後,速やかに腹部症状は消失し,EUS-FNA 施行後5日目に退院した.4か月後,病変は上部内視鏡検査で頂部に陥凹を有する腫瘍に形態変化を認め,さらに縮小傾向であった.また,腹部超音波検査では粘膜下層内に約5mm 大の嚢胞性領域とそれに接する約4mm 大の境界不明瞭な低エコー域,不整な固有筋層の肥厚を認め,胃迷入膵の所見であった.以上より,胃壁膿瘍を合併した胃迷入膵と診断した.現在,再発なく当科で経過観察中である.胃壁膿瘍を合併した胃迷入膵の報告は非常に稀であり,貴重な症例と考えられた.
著者名
大澤 元保, 他
44
1
43-48
DOI
10.11482/KMJ-J44(1)43
掲載日
2018.2.6

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