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甲状腺低分化・未分化癌細胞に対するヘッジホッグ阻害薬GANT61の抗腫瘍効果と癌幹細胞制御作用

甲状腺分化癌は予後良好であるが低分化・未分化癌は予後不良であり,新規治療薬の開発が急務である.多くの悪性腫瘍でヘッジホッグ(Hh)経路の異常な活性化が起こっており,Hh 経路を標的とした治療戦略が有望視されている.Hh 経路の活性化は,腫瘍の生存・増殖・血管新生の促進ばかりでなく,癌幹細胞の制御との関与が示されている.我々は,甲状腺癌細胞を用いてHh経路を阻害するGANT61の抗腫瘍効果並びに癌幹細胞に与える影響を検討した.また,進行甲状腺癌の治療薬として用いられているタキサン系抗癌化学療法薬パクリタキセルとの併用効果も検討した.当教室で樹立された甲状腺低分化癌細胞株KTC-1及び甲状腺未分化細胞株KTC-2,KTC-3を用いてGANT61の細胞増殖,細胞周期,アポトーシス,癌幹細胞比率に与える影響を検討した.また,Hh 経路のeffector であるglioma-associated oncogene (Gli) 1,その下流にある癌幹細胞制御因子(aldehyde dehydrogenase [ALDH], Snail, Slug)や抗アポトーシス分子(survivin,Bcl-2)発現に与えるGANT61の効果を調べた.GANT61は,すべての甲状腺癌細胞株で細胞増殖を用量依存性に抑制した(50% 阻止濃度の平均値: KTC-1細胞は17.2 μM; KTC-2細胞は13.6 μM;KTC-3細胞は13.3 μM).GANT61は,KTC-1及びKTC-2細胞のsub-G1分画を増加したが,G1-Sブロックは起こさなかった.GANT61は,全ての細胞株において用量依存性にアポトーシス分画を増加し,survivin やBcl-2の発現を低下させた.GANT61は,すべての細胞株でGli1, ALDH, Slugの発現を低下し,癌幹細胞比率を低下させた.以上の結果は,GANT61が甲状腺低分化・未分化癌細胞のsurvivin やBcl-2発現低下を介してアポトーシス誘導し,細胞増殖を抑制し,さらに,Hhシグナル標的因子Gli1, ALDH, Slug の発現低下により癌幹細胞の自己再生能を抑制することを示唆している.さらにGANT61は,すべての甲状腺癌細胞株においてパクリタキセルの細胞増殖抑制効果を増強した.これらの基礎研究の結果は,GANT61が甲状腺低分化・未分化癌の新規治療薬として有望なことを示唆している.
著者名
齋藤 亙, 他
44
2
95-106
掲載日
2018.7.3

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