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Online edition:ISSN 2758-089X

本邦におけるマダニ類人体寄生例の概観 ―文献的考察―(2)フタトゲチマダニおよびキチマダニ刺症例

 本邦で発生したフタトゲチマダニ(1943~2005年)およびキチマダニ(1977~2005年)の人体寄生例の報文を通覧して疫学的に検討した.症例数はフタトゲチマダニが101例(男性37,女性49,性別不明15),キチマダニが57例(男性14,女性28,性別不明15)である.両種とも北海道と南西諸島を除く広い範囲に分布しており,患者の都道府県別発生数では,フタトゲチマダニは岡山が14例(14.1%),キチマダニは福岡が13例(26.5%)で最も多かった.年次別の症例数は,両種とも1990~1999年が最も多く,それぞれ49例(57.0%)と18例(48.6%)だった.フタトゲチマダニの患者は3~10月に発生しており,発生率は8月の28.2%をピークに,98.8%の患者が4~10月に集中していた.一方,キチマダニの患者は9月を除く各月に発生しており,発生率は4月の21.6%がピークで,29.7%が11~2月の冬季に発生していた.患者の年齢は,フタトゲチマダニが1~88歳で,60歳代(26.2%)が最も多く,キチマダニでは1~90歳で,9歳以下(42.9%)が最も多かった.年齢と性別の関係は,フタトゲチマダニでは60歳代の女性(19.0%)が,キチマダニでは9歳以下の女児(23.8%)が最も多かった.虫体の寄生部位は,フタトゲチマダニで大腿部が15.4%で最も多く,次いで外耳道が12.1%の順で,キチマダニで頭頂部が18.2%で最も多く,次いで頭部が15.9%の順であった.両種とも頭・頸部への寄生が多く37.4%と54.5%を占めており,特にキチマダニは頭部を選択する傾向がみられた.患者がマダニの寄生を受けた場所については,両種とも大多数が山岳地帯であった. (平成20年2月26日受理)
著者名
沖野 哲也,他
34
3
185-201
DOI
10.11482/2008/KMJ34(3)185-201.2008.jpn.pdf

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