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Online edition:ISSN 2758-089X

急性心筋梗塞後の発熱に関する臨床的検討

心筋梗塞発症24時間以内にICUに入室した,感染症合併のない49例を対象とし,急性心筋梗塞発症による発熱の頻度や状態,梗塞巣との関連などを検討した.49例中39例79.6%に心筋梗塞発症4.3~51時間,平均23.4時間の間に37℃以上の,所謂発熱とされるものがあり,うち38例が2日以内に発熱を来していた.発熱のピークは1例を除き心筋梗塞発症3日以内であり, 37.0~38.4℃ , 平均37.2℃で1~2日間続き,平均発熱後3.8日間で解熱していた.49例中10例, 20.4%は心筋梗塞発症後発熱はなかった.発熱があった症例となかった症例との臨床上の比較において,高齢者で低体重症例やショック状態の症例では発熱を来しにくく,更に35℃以下の低体温を示す症例は心機能が重篤な症例と考えられた.発熱があった症例となかった症例の末梢血白血球数,血清CPK, GOT, LDH値の比較では,平均CPKピーク値のみが発熱があった症例で高く,心筋梗塞による発熱と血清CPK値との関連が示唆されたが,発熱の程度と心筋逸脱酵素値との相関係数による比較では,平均体温ピーク値と平均CPKピーク値とは相関がなく,前・ピーク値体温差とGOTピーク値およびLDHピーク値で僅かに正の相関がある傾向が認められた.急性心筋梗塞発症4日後以降に発現し,かつ4日以上持続する中等度以上の発熱は,心筋梗塞による発熱ではなく,感染症による発熱であった.               (平成5年2月10日採用)
著者名
富澤 貞夫
19
1
1-11
DOI
10.11482/KMJ19(1)1-11.1993.pdf

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