Online edition:ISSN 2758-089X
尿中CPRと血中CPRの解離 -C-ペプチドクリアランスによる検討-
糖尿病患者の膵島B細胞機能を測定するためにC-peptide immunoreactivity (CPR)の測定,特に尿中CPRが汎用されている.しかし,インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)では血中と尿中それぞれのCPRの解離があることをしばしば認める.この病態が如何なる原因であるか,また尿中CPRの有用性は如何なるものか,入院中のインスリン抗体陰性で腎障害を有しないNIDDMで検討した. 1) NIDDM 89症例の内,血糖コントロールの改善した81症例で尿中および血中CPRの変化率を求めたが,尿中CPRの変化率のほうが血中CPRのそれより大であった(69,31%). 2) NIDDM 89症例, 178検体における尿および血中CPRの相関性はr = 0.502で有意な正の相関を示したが,尿中CPR30μg/day以下の低値群で血中CPRは比較的高値を示した.尿中CPR低値群とそれ以上の正常群における尿中および血中CPRとの相関性は後者では有意な正の相関が認められたが,前者では相関性は認められなかった.この原因についてC-ペプチドクリアランス(CCPR)を用いて検討した.尿中CPRとCCPRの相関性はr=0.522と有意な正の相関を認めたが,尿中CPR低値群でCCPRはより低い値を示した.尿中CPR低値群と正常群でのCCPRの比較では,低値群で低値を示した(8.1±0.9, 12.6±0.6 ml/min).血糖値とCCPRはr = 0.288と有意な正の相関が認められ,血糖コントロール良好群と不良群でのCCPRの比較では,不良群で有意に高い値を示した(6.6±0.9, 9.6±1.6 ml/min).これらのことより,血中および尿中CPRの解離はCCPRが関与しており,高血糖状態によりCCPRは亢進することが考えられた.(平成4年9月24日採用)
- 著者名
- 津島 公
- 巻
- 18
- 号
- 3
- 頁
- 173-180
- DOI
- 10.11482/KMJ18(3)173-180.1992.pdf