後腹膜に発生した悪性線維性組織球腫の1例を報告した.症例は82歳の女性,全身倦怠感を主訴に来院し,右下腹部に腫瘤を触知した.検査では鉄欠乏性貧血と,腫瘍マーカーのうちCA 125が50U/mlと高値を示した.腹部超音波,腹部CT,腎尿路造影,消化管造影にて右下腹部,右腎下極に接した後腹謨腫瘤と診断し摘出術を行った.17×12×10 cm (1012g)と6×5×4 cm (46 g)の2個の後腹謨腫瘤は腫瘍被膜は持たないが,限局性の腫瘍であり完全摘出した.割面では壊死,出血を伴う黄色灰白色充実性腫瘍であった.病理学的には悪性線維性組織球腫(storiform pleomorphic type)であった.術後4ヵ月に局所再発を生じ,術後10ヵ月で死亡した.術後CA 125は低値となり,再発時にも上昇しなかった.病理解剖は行っていない.(昭和63年12月24日採用
著者名
今井 博之,他
巻
15
号
1
頁
171-175
DOI
10.11482/KMJ-J15(1)171
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