h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

Shy-Drager症候群の神経病理学的研究

Shy-Drager症候群を呈した1剖検例について述べ,本症例とShy & Dragerの報告例との比較検討および本症候群の独自性について考察を行った.症例は遺伝歴を有しない60歳女性で, 45歳頃より下肢のしびれ感,軽度の知覚鈍麻で発症し,起立性低血圧,尿失禁,起立・歩行障害を来し,無呼吸発作の後は急速に全身状態が悪化し,約15年の経過で死亡した.病理学的には主に,小脳,黒質,橋,オリーブ核,脊髄,交感神経節,骨格筋に変性が認められた.小脳では虫部,両半球にPurkinje細胞の著明な脱落とBergmannグリアの増殖があり,髄質では脱髄と,ゲリア増殖がみられた.黒質の神経細胞は中等度脱落し,メラニン顆粒は一部遊出していた.橋では橋底部が萎縮しており,橋核神経細胞脱落と横橋線経の脱髄がみられた.下オリーブ核の神経細胞は著明に萎縮脱落していた.脊髄では中間外側核および背側核の神経細胞の高度の脱落,前核細胞の軽度の脱落,仙髄Onuf核の萎縮,前・後脊髄小脳路の軽度の脱髄がみられた.本例はShy & Dragerがfu11 syndromeとして述べた症状のうち主なものを伴っており,臨床的にはShy-Drager症候群の診断がつけられた.しかしShy-Drager症候群の例が本例の如くOPCAに近い症状を現わすことは多くあり,さらにShy-Drager症候群と診断された例の中にはparkinsonism様症状を呈することも少なくない.本例は臨床的には強い神経症状を伴ったShy-Drager症候群であるが,神経病理学的にはOPCA型の病変をもつmultiple system atrophyであることが確認された.
著者名
木村 久,他
10
2
224-232
DOI
10.11482/KMJ-J10(2)224

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