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Online edition:ISSN 2758-089X

人型結核菌体抽出多糖体成分(S.S.M.:丸山ワクチン)の抗癌作用に関する研究

今日,癌免疫療法の主役を演ずる細胞は,リンパ球,N-K細胞,マクロファージと考えられているが,皮膚,臓器移植,試験管内での知見と異なって,生体内に一緩発生し,無限に増殖を続け,かつ,抗原性の弱い癌細胞の抑制には,癌増殖に対応する体内既存の免疫担当細胞に期待しても不可能に近い.これに反して,生体内にあまねく分布する間質細胞,間葉細胞に由来する結合織の増殖,コラーゲンの合成,増殖は癌増殖を抑制する最も重要な生体防御機転である.人型結核菌体抽出多糖体(丸山ワクチン)の作用は化学療法のような直接的癌殺傷作用はないが癌間質(血管,筋,神経,軟骨等の線維成分)のコラーゲン増殖を促進するもので,免疫T一細胞,マクロファージ,牌細胞はこのコラーゲン増殖をさらに二次的に増強した.すなわち,丸山ワクチンの抗癌作用は乳癌を主体とする臨床治験で治癒困難である癌性潰瘍の治癒,癌破壊局所の修復,ひいてはコラーゲン増殖による癌封じ込め,癌瘢痕化を招来する重要な抗癌機序である.したがって,丸山ワクチンの効果を期待するには,癌が小さければ小さいほど効果的で,早期より使用し,長期間使用するほど効果的であった.この臨床的事実を実証すべく,更にT―細胞欠除のヌードマウスへの人癌(胃癌,肺癌)のxenograftsを作製して,丸山ワクチンをモデルとして癌浸潤への防御機転としての癌問質,基質の結合織およびコラーゲン増殖が如何に重要であるかを明らかにすることができた.
著者名
木本 哲夫
10
3
286-304
DOI
10.11482/KMJ-J10(3)286

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