h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

当院もの忘れ外来を受診した主観的認知機能低下の特徴

目的:当院もの忘れ外来を受診した(主観的認知機能低下;SCD)患者の臨床的特徴, 神経心理検査, 画像検査結果との関連を考察する. 方法:2018年1月~2022年9月に当院もの忘れ外来を受診した患者のうちHDS-R > 20/30かつDASC-21 < 30/84の患者106人(男性34人, 平均年齢72.8 ± 9.3歳)の診療録の情報(患者背景, 神経心理検査, 画像所見)を後方視的に検討し,患者本人のみが認知機能低下を自覚している群(A群:26人)と家族も認知機能低下を感じている群(B群:80人)に分け,2群間の違いを検討した(カイ二乗検定,対応のないT検定). 結果:記憶障害を主訴とした患者が83%であった.併存疾患はHT 53.8%,DL 50.9%,DM 28.3%,精神疾患 17.9%といずれも一般的な有病率より高かった.神経心理検査ではHDS-R 25.8±3.0,MMSE-J 26.0±2.8,DASC-21 25.4 ± 2.4であったが,頭部MRI では約半数に脳血管障害や脳萎縮を認め脳血流SPECT では後部帯状回の集積低下は19.1%に認めた.再診した患者38人のうち28.9%が認知症に進展した.両群間差の検討では患者背景,画像検査では両群に有意差を認めなかったが,B群では家族は記憶障害以外に意欲低下や易怒性に気づいており,全般的認知機能, 生活障害,介護負担,精神症状の評価で有意差を認めた. 結論:既報どおりSCD患者は一定数認知症へ進展した.本人のみならず家族も何らかの認知機能低下を少しでも感じている場合はより認知機能が低下している傾向にあるため,認知症への移行リスクが高いと考えられた.これらの患者群は疾患修飾薬のターゲットになりうることが推測できるため積極的にバイオマーカー検査などを行うべきである.
著者名
久德 弓子, 他
50
13-18
DOI
10.11482/KMJ-J202450013
掲載日
2024.5.31

b_download