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Online edition:ISSN 2758-089X

健康管理学からみたメタボリックシンドローム

 メタボリックシンドロームは粥状動脈硬化症の発症進展を促進する疾患概念であり,心血管イベントを予測するうえでLDLコレステロールとは独立した病態と捉えられている.同一個人に耐糖能異常,脂質代謝異常,高血圧,腹部肥満など複数の危険因子が集積することによって,飛躍的に心血管疾患の罹患率と死亡率を高めることが特徴である.これまでWorld Health Organization,National Cholesterol Education Programによる二つの主要な診断基準が提唱され,広く臨床に用いられてきたが,最近International Diabetes Federation,日本より腹部肥満の重要性を考慮した新しい診断基準が発表された.これらの基準はハイリスク群を抽出し,疾患予防を目的とする日常臨床上有用な判定基準といえる.メタボリックシンドロームと心血管疾患発症との関連性については,前向きコホート研究によって非メタボリックシンドロームに比べ冠動脈疾患死亡や全心血管疾患死亡の危険度を著しく増加させることが判明している.  本総説では,メタボリックシンドロームと身体活動・運動,食生活および心理的ストレスとの関連性に焦点をあてた疫学研究の成果を要約し,予防医療の現場で対処すべき課題や方法について述べた.メタボリックシンドロームおよびそれを構成する危険因子と各生活習慣因子との関連生を示す前向きコホート研究は若干報告されているものの,まだその研究数は不足している.今後は新しいメタボリックシンドロームの診断基準に基づいた心血管疾患発症や全死亡についての検討が必要であり,さらには,メタボリックシンドロームの改善要因としての身体活動・運動や食生活,心理的特性に関する介入研究の蓄積が必要である.
著者名
藤井 昌史,小牧久和子
31
1
15-24
DOI
10.11482/KMJ31(1)015-024,2005.pdf

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