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炎症性腸疾患における fractalkine と matrix metalloproteinases の発現 -局所炎症制御機序と鑑別診断への有用性-

fractalkine(FKN)は1997年に同定されたchemokineであるが,白血球走化作用のみならず細胞接着作用をも合わせ持っている.また,細胞基質分解酵素であるmatrix metalloproteinases(MMPs)もchemokinesと同様,種々の炎症性疾患に関わっている.そこで,潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)の粘膜局所におけるchemokinesおよびMMPsの蛋白およびmRNAの発現を活動部位別に検討した.UC20例(男性13例,女性7例,平均41.4歳,全大腸炎型11例,左側大腸炎型6例,直腸炎型3例),CD10例(男性9名,女性1名,平均27.9歳,小腸型6例,小腸大腸型2例,大腸型2例),および大腸に病変のない若年成人(NC)10例(男性8例,女性2例,平均33.2歳)に大腸内視鏡検査を施行し,回腸末端,虫垂開口部,S状結腸,直腸から生検を行った.抗FKN,monocyte chemotactic protein(MCP)-1,MMP-3,-9,-12抗体を用いて凍結切片の免疫染色を行った.中拡大1視野での陽性細胞数を計測し,3視野分を集計したうえでの平均陽性細胞数をタンパク発現の指標とし,炎症の有無,採取部位別に評価した.また,生検組織からmRNAを抽出し,RT-PCRでFKNとMMPsのmRNAの発現を検討した.chemokinesとMMPsともに,炎症部位では,陽性細胞数,mRNA発現ともに有意に増加していた.寛解期患者の非炎症部では陽性細胞数増加やmRNA発現の亢進はいずれも認められなかったが,活動期患者における非炎症部位では陽性細胞数の増加がないにもかかわらずmRNAの発現は有意に亢進していた.非炎症部位の採取部位別検討では,回腸末端でのFKN,MMP-3,-9,-12がCDでの陽性細胞数がUCに比べて有意に高値で,虫垂開口部では逆にUCでのMCP-1,MMP-3,-9がCDに比べ高値であった.活動期のUC,CD患者では,chemokinesとMMPsは炎症部のみならず非炎症部においても mRNAの発現が亢進していた.しかし,非炎症部では蛋白発現の増加が抑えられているため局所の炎症が惹起されていないものと考えられた.すなわちIBDにおいては,post-transcriptional regulationが有効に機能することで炎症を制御していることが示唆された.また,部位別の検討では発現パターンが異なることから,非炎症部位であっても回腸末端や虫垂開口部でのchemokinesやMMPsの発現を検討することにより,鑑別困難例の診断などの臨床応用が期待できる.(平成16年10月27日受理)
著者名
藤田 穣
30
2
137-152

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