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家族性大腸腺腫症のゲノムAPC遺伝子変異と臨床徴候の関係に関する研究

 背景:家族性大腸腺腫症(FAP)は多発性大腸腺腫と多彩な大腸外病変を特徴とし,adenomatous polyposis coli (APC)遺伝子変異に起因する遺伝性疾患と考えられている.本症における遺伝子診断の意義を明らかにするため, APC遺伝子変異と臨床徴候の関係を検討した. 対象と方法:大腸および大腸外病変からFAPと臨床診断した32家系44例を対象とし,以下を検討した.1)生殖細胞APC遺伝子変異をPCR-SSCP法,ないしPTT法でスクリーニングし,5’側(エクソン1 -1 2)変異群,3’側(エクソン13-15)変異群,変異陰性群の3群に分け,大腸病変の程度,胃・十二指腸腺腫の頻度と経過,および他の大腸外病変(骨腫,デスモイド,網膜色素上皮過形成)の頻度を比較検討した.2)変異陽性例の塩基配列異常を検索し,上記臨床徴候と対比した. 結果:1)7家系8例は5’側変異群,11家系22例は3’側変異群,14家系14例は変異陰性群であった.3’側変異群では他の2群よりも密生型大腸腺腫症,十二指腸非乳頭部腺腫,および網膜色素上皮過形成の頻度が有意に高かったが,十二指腸非乳頭部腺腫の進展との関係は明らかではなかった. 2) 8家系11例にnonsense変異を,8家系17例にframeshift変異を認めた.コドン161および1556の変異家系は大腸腺腫症が散在性で鋸歯状腺腫を伴っていた.コドン1556変異家系では顕著な進行性十二指腸腺腫症を,コドン1530変異家系では浸潤性デスモイド腫瘍の発生を認めた. 結論:APC遺伝子変異部位の違いによる臓器特異的なFAPの形質発現を明らかにした.従って本遺伝子診断はFAP患者の管理方針決定の一助となりうると考えられる.しかし,FAPの原因としては, APC遺伝子以外の遺伝的素因の関与も推測された.                               (平成13年10月16日受理)
著者名
小堀 陽一郎
27
4
279-292

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