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Online edition:ISSN 2758-089X

炎症性腸疾患の診断と内科的治療 ―最近の知見を中心にー

 クローン病と潰瘍性大腸炎はいずれも若年者に好発する難治性の腸の慢性炎症性疾患であるが,その病因・病態には違いが認められ,それぞれに特異的な診断と治療が存在する. クローン病では, 1995年に本邦での診断基準が大きく改訂され,アフタ様病変のみからなる特殊型も確診可能となった.クローン病患者の胃噴門部には,竹の節状外観という特異的な所見を認めることが多く,一見正常に見える胃・十二指腸粘膜では高頻度にCD68陽性細胞が集簇している.また,抗Saccharomyces cerevisiae抗体の陽性率が高い.治療では,栄養療法が初期治療としても維持療法としても有効であるが, 5ASA製剤,抗TNFα抗体, CD4抑制療法, ICAM-1アンチセンス療法など新たな治療法も注目されている.また,狭窄した腸管を切除せずに内視鏡下でバルーンを用いて拡張する方法は今後普及していく治療法である. 潰瘍性大腸炎では,虫垂開口部病変の存在や拡大内視鏡を用いた重症度の評価が新たな診断法として注目されており,血清学では抗好中球細胞質抗体(核周囲型)の診断意義が認められつつある.治療では, antedrug conceptに基づく肝代謝性ステロイドや白血球除去療法,シクロスポリン静注療法,二コチン療法,ヘパリン療法,抗生物質療法など種々の試みがなされている. クローン病とも潰瘍性大腸炎とも診断できないようなindeterminate colitisが存在するのは確かであるが,診断力不足によるindeterminate colitisを可能な限り避け正確な治療方針がたてられるように,炎症性腸疾患の診断と内科的治療に関する最新の知見を解説する.
著者名
古賀 秀樹,飯田 三雄
26
2
83-94
DOI
10.11482/KMJ-J26(2)083-094.2000.pdf

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