h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

左側優位の両側内頚動脈狭窄症に伴い間欠的な脳梁性失行をきたした1例

 患者は69歳女性,右利き.右上肢の動かしにくさに引き続き,しゃべりにくさも出現したため川崎医科大学神経内科外来を受診した.外来受診時,日常生活動作には支障はみられなかったが,言語命令に対し左手の運動が困難な所見があり脳梁性失行が疑われた.入院時一般身体所見で両側,特に左側優位に内頚動脈の雑音を聴取した. 頭部MRIでは多発性脳梗塞の像を認めたが,脳梁には異常は認めなかった. SPECTで左半球優位の血流低下がみられた.脳波では左半球の全般性徐波化がみられた。MR-angiography (MRA)とDigital subtraction angiography (DSA)では左優位の両側内頚動脈の狭窄がみられた.症状に変動が見られることより脳血流不全が関与しているものと判断し,左内頚動脈内膜剥離術を施行した.術後症状は軽快した.脳梁性失行の原因として従来脳梁梗塞,腫瘍,脳梁の動静脈奇形,外傷, Marchiafava-Bignami病などが報告されている.本例の間欠的脳梁失行症状出現には,ゲルストマン症候群や失書などを伴わないことより,推測の域をでないが,脳梁あるいはその連絡経路の機能不全が考えられ,その原因として左側優位の一過性脳循環不全が考えられた.     (平成10年11月19日受理)
著者名
向井 公浩,他
24
4
261-265
DOI
10.11482/KMJ24(4)261-265.1998.pdf

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