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海綿静脈洞の壁と内腔構造の解剖学的検討

<目的> 海綿静脈洞がその名の通り静脈洞であるのか,或いは静脈叢であるかは長い間議論されて来た.また,海綿静脈洞部病変に対して直達手術を行う機会が増えているが,海綿静脈洞の外側壁の構造については脳神経の走行部位や静脈腔との関係など不明な点も残されている.中でも,外側壁のouter layer である固有硬膜を剥離した後に存在する膜様の構造物,いわゆるinner membranous layer は最近特に注目を集めている.これらの問題を解剖用遺体を用いて検討した.<材料と方法> embalming techniqueにて保存された解剖用遺体38体より一塊として摘出した海綿静脈洞とその周辺組織を手術用顕微鏡を用いて解剖し,観察した.更に組織学的検討も加えた.<結果> 海綿静脈洞の内腔(静脈腔)の発達度には個体差が著しく認められ,海綿静脈洞全体に対する静脈腔の占める割合が2/3以上のwell developed type , 1/3~2/3のmoderately developed type, 1/3未満のpoorly developed type の3型に分類した.その割合はそれぞれ66%, 21%, 13%であった. well developed typeが海綿静脈洞として一般的にイメージされているもので,静脈腔が広く存在し,間に梁柱を認める型である.それに対し,poorly developed type は散在する静脈の間を疎性結合織が埋め,その中を脳神経が走行し,脂肪も散在し,まさに静脈叢の様相を呈していた.海綿静脈洞の外側壁は冠状断の組織標本で観察すると,密性結合織と疎性結合織の二層構造よりなり,この二層の間に他の構造物は存在しなかった.静脈腔が広く発達した例では,疎性結合織は一層の膜のように見えるが,深部へも連続している構造物であった.<結論> 海綿静脈洞の本質は,静脈腔の発達程度のバリエーションやpoorly developedtypeの様相を考慮すると,静脈叢と理解する方が妥当と思われる.外側壁の固有硬謨を剥離して認められる膜様物は,その外観,性状および組織標本による観察結果より,固有硬膜の内側には特別な膜があるわけではなく,静脈や脳神経等を包む疎性結合織が膜様に見えているだけであると考えられた.              (平成10年10月5日受理)
著者名
岡村 大成
24
3
161-172

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