h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

数拍をへて移行する特異な間歇性左脚ブロックの1症例

間歇性脚ブロックは通常,ある一定のcritical rate を境に脚ブロック波形が出没するが,われわれは数拍をへて徐々に,かつ段階的に移行する間歇性左脚ブロックの1例を経験した.58歳女,農業.主訴は胸痛. 1974年初診時は洞調律, PR 0.18秒,QRS幅0.08秒,左室高電位でQRS軸は+10°.その後不完全左脚ブロック, PR 0.17秒, QRS幅0.11秒, QRS軸は+10°であった.経過中,数拍をへて移行する特異な頻脈依存性間歇性左脚ブロックを認めた.左脚ブロックはQRS幅0.16秒,QRS軸-35°の左軸偏位を伴う完全左脚ブロックであった. QRS波形が数拍をへて移行する際,PRは0.17秒で一定であることから,非発作性心室頻拍の等頻度房室解離や間歇性WPWとは容易に鑑別された.その機序として,左右脚の伝導速度の差によって左室・右室脱分極の同期が微妙に変化するためと考えられた.例えばH-RBが50 msec として, H-LBが60 msec であれば部分的に左右心室の脱分極は同期して不完全左脚ブロックとなるが, H-LBが100 msec となれば同期しなくなり完全左脚ブロックとなる.H-LBが頻脈依存性に65, 70, 80, 90, 100 msecと徐々に伝導遅延を生じれば本例のような段階的な間歇性左脚ブロックが生じると解釈された.以上,特異な波形の間歇性左脚ブロックの1症例を報告し,その発生機序について考察した.                                (平成7年4月21日採用)
著者名
加藤 孝和,他
21
1
41-45
DOI
10.11482/KMJ21(1)41-45.1995.pdf

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