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Wistar ratにおける加齢による糸球体の変化―糸球体基底膜及び糸球体上皮細胞に注目して―

腎糸球体構成細胞のうち糸球体上皮細胞は他の細胞に比べて分裂能がないことと,糸球体上皮細胞の基底膜からの脱落が契機となり,基底膜とボーマン嚢上皮の癒着がおこり,糸球体硬化病変が形成されていくことを,我々はWistar系ratを用いて証明してきた.分裂能を有さない糸球体上皮細胞を経時的に観察することによって,加齢による糸球体上皮細胞の変化を捉え,糸球体上皮細胞脱落をもたらす因子を解明することができると考え,生後1週から100週までの正常Wistar系ratを用いて,血管極と尿管極を通る面での糸球体基底膜長と,一糸球体あたりの糸球体上皮細胞数を計測し,同細胞の超微形態学的観察を行った.加齢の結果,糸球体基底膜長,糸球体体積は統計学的に有意差を持って増大したが,一糸球体あたりの糸球体上皮細胞数はその生涯を通じて170前後で不変であった.被覆すべき基底膜面積の増大した高齢ラットの糸球体において,糸球体上皮細胞の細胞内構造に変化を認めた.高齢ラットでは糸球体上皮細胞の剥離,係蹄とボーマン嚢上皮の癒着,硬化病変を認めた.Wistar系ratにおいては,糸球体基底膜が生涯にわたって延び続けるにもかかわらず,糸球体上皮細胞はその数が生涯一定であるため,その物理的なギャップによって上皮細胞の老化,変性,脱落がおこりやすく不可逆的糸球体硬化を形成することが考えられる. (平成7年10月25日採用)
著者名
玉井 仁
21
3
215-224

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