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一過性前脳虚血後の海馬における組織学的変化―特にアストロサイトの役割について―

一過性脳虚血後の神経細胞の変化については多くの報告がなされているが,アストロサイトについての検討は少ない.本研究では,砂ねずみの一過性前脳虚血後の海馬CA1,CA3領域のアストロサイトの組織学的変化を, Hematoxylin Eosin染色(HE染色), Grial Fibrillary Acidic Proteinに対する免疫組織化学染色(GFAP染色), Nicotinamide Adenine Dinucleotide Phosphate diaphoraseに対する酵素組織化学染色(NADPH-d染色)等を行い,経時的に観察し比較検討した.その結果HE染色では, CA1領域において虚血後3日目に錐体細胞が虚血性変化を起こし,5日目以降にアストロサイトやマクロファージなどの非錐体細胞が増加することを認めた.一方, CA3領域では錐体細胞の虚血性変化は認められず,非錐体細胞の増加も認められなかった. GFAP染色では,虚血後2日目にCA1,CA3領域において足突起および胞体が増大した反応性アストロサイトが出現した.これらGFAP陽性部位を画像処理し定量評価すると, CA1領域では4日目にその総面積が最大になり,5日目以降も反応性は持続する傾向にあったが, CA3領域では反応性アストロサイトは出現するもののその数は増加せず,6日目以降は反応性は低下する傾向にあった.NADPH-d染色では,対象群の海馬においてNitoric Oxide Synthase(NOS)含有神経細胞がわずかに認められるのみで虚血による変化は認めなかった.このように,虚血後2日目よりCA1およびCA3領域に反応性アストロサイトが出現し,CA1領域で反応が持続しCA3領域で低下したことは,虚血後の神経細胞に対して反応性アストロサイトが積極的に関与していると考えられた.またNADPH-d染色における結果により,虚血後のグリアの機能としてのNOの関与は否定的となったが,今後さらに検討を必要とするものと考える.                      (平成8年1月11日採用)
著者名
佐藤 真也
21
3
225-236

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