h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

救急領域における経動脈的塞栓術(TAE)

近年,経動脈的塞栓術(TAE)は救急疾患における大量出血に対する,初期治療として大きく位置付けられてきている.TAEの適応は外傷性臓器損傷,臓器動脈瘤や動静脈奇形の破裂,消化管出血,骨盤骨折による大量出血である.1)消化管出血患者における血管造影は診断および治療にもつながる手段として,広く認識されている.しかし血管造影の診断能に関する最も大きな限界は少なくとも0.5 ml/分以上の持続した出血しか描出できないことであり,また下部消化管出血では過剰塞栓は腸管壊死を惹起するため,慎重であらねばならない.2)臓器損傷による大量出血は救急領域では比較的頻度の高い疾患で,一般的に肝臓癌の自然破裂例以外は良性疾患が多く,かつ自然に止血することが多く,特に後腹膜腔出血では自然止血例が多い.これらの臓器損傷による大量出血に対し,CTや腹部超音波検査による出血部位および量の診断に基づき,我々はTAEか手術かの治療法の選択をせねばならない.外傷性副腎破裂は比較的稀な疾患であるが,時に出血性ショックを引き起こすことがあり, TAEは副腎破裂による大量出血に対しても有効な治療となる.3)骨盤骨折による大量出血に対するTAEは手術にも優る最も有用な手段として,重症例では第一選択となっている.Interventional Radiology と画像技術の進歩により,今後も救急疾患に対する緊急TAEは増加の一途をたどると考えられる.             (平成6年4月30日採用)
著者名
今井 茂樹,他
20
S
59-65
DOI
10.11482/KMJ20(S)59-65.1994.pdf

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