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血管内皮細胞PDK1シグナルの生理的役割の解明 ~血管内皮細胞特異的PDK1欠損マウスを用いた検討

 種々の成長因子によって支配される細胞内の分子機構にphosophoinositide-dependentprotein kinese 1(PDK1)シグナル伝達系は広く関わると考えられている.本研究では血管内皮細胞特異的PDK1欠損(VEPDK1KO)マウスを作製し,そのフェノタイプを詳細に解析して,血管内皮細胞におけるPDK1シグナルの生理的役割を検討した.その結果,通常食飼育下24週齢のVEPDK1KO マウスでは非欠損コントロール群に比し,耐糖能および全身のインスリン感受性増強を認めた.また血中アディポネクチン値上昇,肝での糖新生系酵素活性の抑制を認め,肝での糖産生の抑制が確認された.インスリン感受性亢進の機構の詳細解明のため生後4週齢から高脂肪食負荷をしたところVEPDK1KO 群では12週齢で既にコントロール群に比し,内臓脂肪量の減少,白色脂肪細胞におけるアディポネクチンmRNA 量は増加,monocyte chemoattractant protein(MCP)-1,レプチン,tumor necrosis factor(TNF)-α のmRNA 量は低下を認めた.その結果,肝でのAMP-activated protein kinase(AMPK)活性化がみられインスリン抵抗性の改善をもたらしたと考えられた.更にVEPDK1KO 群に認められた高脂肪食負荷による内臓肥満あるいは脂肪細胞肥大の抑制には,脂肪組織における血管新生の抑制が関与する可能性が強く示唆された.本研究によって,血管内皮細胞におけるPDK1シグナルが血管新生系調節による脂肪組織の形成に深く関与するとともに,ひいてはインスリン感受性や糖代謝にも影響を及ぼすことが明らかにされた.(平成22年10月22日受理)
著者名
俵本 和仁
36
4
301-312

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