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iPS 細胞由来網膜色素上皮細胞移植のためのNaIO3誘因網膜色素上皮変性げっ歯類モデルの特性評価

網膜色素上皮(RPE)は視細胞維持に重要な役割を担い,その機能低下は加齢黄斑変性等の原因となる.近年,健常なRPE を補充するRPE 移植が注目されており,臨床応用も開始された.前臨床研究における動物実験にあたり,過去にもげっ歯類のヨウ素酸ナトリウム(NaIO3)誘因RPE 変性モデルの研究はあるが,げっ歯類は黄斑部を欠くため最適でない.黄斑を有する非ヒト霊長類における薬剤全身投与は両眼の失明を招くため動物愛護の観点から不適切であり,現在適切なモデルが存在しない.従って,我々はサルを用いた移植実験を念頭に置きNaIO3の硝子体内投与によりラット片眼にRPE 変性を誘発可能か研究した.また,NaIO3誘因RPE 変性モデルにヒト多能性幹細胞由来RPE(hiPS-RPE)を網膜下移植し視細胞の保護効果を検討した. 8-10週齢のオスのWistar ラットの片眼に0.005,0.01,0.02 μg/ml のNaIO3を硝子体内投与した.経時的にHE 染色にて網膜外層厚と網膜内層厚を計測し,透過型電子顕微鏡で形態学的評価を行った.NaIO3投与後2日目にhiPS-RPE 懸濁液を網膜下に移植し,組織学的評価を行った. 0.005 μg/ml 投与群では網膜内層・外層厚ともに変化はなく,0.02 μg/ml 投与群では網膜全層が障害され,0.01 μg/ml 投与群では網膜外層のみが障害された.RPE の形態学的変化はNaIO3投与後3日目から出現し,以降網膜外層厚が急速に菲薄化した.いずれの投与群も非投与眼に影響はなかった.hiPS-RPE 移植眼では,網膜外層厚が厚い傾向にあった. まとめると,NaIO3片眼硝子体内投与により,げっ歯類片眼RPE 障害モデル作製に成功した.hiPS-RPE 網膜下移植により視細胞保護効果を得られた.本方法はRPE 移植の前臨床研究の動物モデルの基礎として有用である. doi:10.11482/KMJ-J42(2)85 (平成28年7月29日受理)
著者名
石田 順子,他
42
2
85-93
掲載日
2016.10.5

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