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泌尿器科領域癌患者におけるレボカルニチン投与のQOL に関する初期検討

今回我々は初の試みとして,泌尿器科領域癌における抗癌剤治療前後での血清カルニチン値を測定し,QOL への影響について検討した.さらに癌治療中の患者においてカルニチン補充が及ぼすQOL への効果について検討を加えた. 2016年6月1日から2018年9月30日までに当科で化学療法もしくは分子標的薬治療を行った泌尿器科領域癌患者17例を対象とした.抗癌剤治療前後での血清カルニチンを測定し,その後レボカルニチン1,500 mg/ 日の経口投与を行い,QOL についてprospective に評価を行った.抗癌剤治療前,治療3カ月,レボカルニチン経口投与1カ月,3カ月の4ポイントで血清遊離カルニチンを測定し,QOL については Brief Fatigue Inventory( BFI)を用いた global fatigue score(GFS)で評価した. 年齢中央値は69歳(52~82歳)で男女比は12:5であった.疾患は尿路上皮癌が10例,前立腺癌が5例,腎癌が2例であった. 治療内容は尿路上皮癌に対するgemcitabine/cisplatin が10例,前立腺癌に対するdocetaxel が3例,cabazitaxel が1例,etoposide/cisplatin が1例,腎癌に対する分子標的薬(sunitinib,pazopanib)が2例であった.血清遊離カルニチンは,抗癌剤治療前:49.0±12.1μmol/L,抗癌剤治療後:36.0±10.3μmol/L と抗癌剤治療後に統計学的に有意な低下を認めた(p<0.05). また抗癌剤治療前と比して17例中13例(76.5%)が,抗癌剤治療3カ月でカルニチンの低下を認めた.血清遊離カルニチン値が基準値未満に低下した症例(<36μmol/L)をカルニチン低値群(n=9),基準値を保っていた症例をカルニチン非低値群(n=8)として2群間について検討した.カルニチン低値群においてレボカルニチン内服3カ月で,内服前と比して統計学的に有意なGFSの低下が認められ,QOL の改善が得られた(p<0.05).一方,カルニチン非低値群では,レボカルニチン内服前後でGFS に差異は認めなかった.またレボカルニチン内服3カ月でGFS が改善した症例をレボカルニチン有効例とすると,カルニチン低値群で88.9%(8/9)が有効,カルニチン非低値群で50.0%(4/8)が有効であった. 抗癌剤治療中のカルニチン欠乏症では,カルニチン補充でQOL の改善が期待できると考えられた.レボカルニチンは泌尿器科領域癌患者の治療の際に補助薬の一端を担うことが期待される.また泌尿器科領域癌患者において,抗癌剤治療によって血清遊離カルニチン値が低下することが示唆された.
著者名
月森 翔平, 他
45
111-120
掲載日
2019.11.11

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