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Online edition:ISSN 2758-089X

胃癌骨転移に対するデノスマブ投与後に著明な低カルシウム血症が遷延した一例

悪性腫瘍の骨転移に対し,デノスマブは骨関連有害事象の予防のため広く使用されている. 低カルシウム血症は比較的頻度の高い有害事象の1つであるが,Common Terminology Criteria for Adverse Events v4.0(CTCAE)Grade4となる重篤な低カルシウム血症は稀である.今回,胃癌骨転移に対するデノスマブ投与後にCTCAE Grade 4の著明な低Ca 血症を呈し治療に難渋した症例を経験したので報告する.症例は50代男性.腰痛を主訴に来院.8年前に幽門部胃癌に対し幽門側胃切除(Roux-en-Y 再建)を施行されている.精査の結果,胃癌術後再発(多発脊椎転移)と診断された.切除不能進行再発胃癌に対する治療として,S-1+ シスプラチン(SP)療法開始.2クール目から多発脊椎転移に対し,デノスマブ皮下注および経口カルシウム製剤の投与を開始した.デノスマブ投与から3日後に上腕と背部の冷感が出現し,血清Ca 5.6 mg/dL と著明な低下を認めた.点滴によるグルコン酸カルシウム補充(最大投与量58.5 mEq/ 日)を行うも血清カルシウム値は不安定であり,安定化するまでに,高容量のグルコン酸カルシウム静注,活性化ビタミンD製剤および乳酸カルシウム製剤の最大量の内服を1か月以上必要とした.本症例の臨床経過とともに,デノスマブによる低カルシウム血症のリスクについて若干の文献的考察を加えて報告する.
著者名
堅田 洋佑, 他
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27-32
DOI
10.11482/KMJ-J202046027
掲載日
2020.5.1

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