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なぜ日本人失語症患者では2文字以上の仮名書き取りが困難なのか

 書き取りの二重経路モデルでは仮名非語は音素文字素変換で自動処理される.従って仮名1文字が書ける失語症患者は,正しく仮名非語を書けるはずである.にもかかわらず臨床的には,2文字語でさえ正しく書けない失語症患者をしばしば経験する.本研究の目的は日本人失語症患者において二重経路モデルが2文字語の書き取りの正確性を予測しうるかどうかを調べることである.我々は16人の日本人失語症患者に仮名1文字,仮名2~5文字からなる単語と非語の書き取りを行った.この結果,非語と単語ともに(1)仮名1文字の正答率から予測されるよりも2文字語の正答率は低く,(2)語の1番目の文字よりも2番目以降の文字は同程度に正答率が低かった.(3)非語を一枚の紙に全て書く場合に比べ,1文字ずつ別の紙に書く方が成績が良かった.以上の結果から,音素から変換された文字素を一時的に保持する正書法的バッファーの障害が示唆された.さらにこの正書法的バッファーの障害は語長効果を呈するワーキングメモリー障害ではなく,前後の文字の干渉作用によると考えられた.(平成19年9月20日受理)
著者名
宮崎裕子
33
4
297-305

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