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Online edition:ISSN 2758-089X

除草剤パラコートの心臓機能に及ぼす影響 -実験的研究-

【背景と目的】  重症パラコート中毒では急性期にショック状態から離脱できず死に至る症例も少なくない.しかし,パラコートの循環動態への影響に関する報告は少なく,特にinvivoにおいて心収縮性を直接評価したものはない.そこで,本研究では心臓の負荷条件による影響を受けにくいとされている左室収縮末期圧容積関係(left ventricular end-systolic pressure-volume relationship ; ESPVR)を用いて,パラコート中毒急性期における心臓機能-特に心収縮性の変化について検討した. 【方法】  小動物のESPVRは曲線となるため従来のEesやEmaxなどの指標をそのまま使用することができないので ESPVRを中等度の左室容積(mid-range left ventricular volume ;mLVV)まで積分したPVAr  を定量的な指標として用いた.  18匹のウイスター系ラットを6匹毎の3群に分けコントロール群,パラコート100mg/kg投与群(PIOO群),パラコート200mg/kg投与群(P200群)とした.開胸下に圧チップセンサーカテーテルとコングクタンスカテーテルを左心室に挿入し,測定したESPVRよりPVAr  を算出し心収縮性の指標とした.同様に左室拡張末期容積(Ved)を前負荷,収縮末期圧を一回抽出量で除した実効動脈エラスタンス(Ea)を後負荷の指標とし,パラコート投与前,投与後10, 15, 20, 25, 30分の心拍出量, PVAmLW, Ved, Eaの変化を観察した.コントロール群には5%ブドウ糖液を授与した. 【結果】  PIOO群, P200群ともにパラコート投与10分後からPVAn  は有意に上昇していた.P200群ではVedの低下, Eaの上昇,心拍出量の減少がみられhypovolemiaに類似した循環動態であった. PIOO群では, Ea, Ved,心抽出量は有意な変化はみられなかった. 【結論】  パラコ-ト投与後急性期は,む収縮性が上昇しており,循環動態はhypovolemiaに類似していた.(平成15年10月21日受理)
著者名
堀内 郁雄
29
3
231-240
DOI
10.11482/KMJ29(3)231-240.2003.pdf

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