Online edition:ISSN 2758-089X
マウスES細胞脱核法の検討
胚性幹細胞(embryonic stem cell以下ES細胞)は,自己複製能とすべての細胞に分化する能力を有する細胞である. ES細胞の核を脱核し患者由来の体細胞核を導入することができれば,既存のES細胞を患者自身の遺伝情報を持つES細胞に造り換えることができる.これによって現在の臓器移植における免疫拒絶の問題を回避できると考えられるが,現在のところES細胞から効率よく核を除く方法は報告されていない.そこでES細胞の脱核法を検討したL マウスES細胞(E14TG2a-EScell)にアクチンを脱重合させるためサイトカラシンBを作用させ,その核を除くためにディスク脱核法と重層遠心脱核法の2種類の遠心法を行った.
ディスク脱核法により9,000rpmでは約23%, ll,000rpmでは約42%の核を脱核できた. Ficollの25%, 20%, 10%, 5 溶液を重層し,その上にES細胞を乗せて28,500rpm60分間の遠心による重層遠心脱核法では約40%の効率で脱核できた.脱核したES細胞を大量に得る方法としては,重層遠心脱核法が良いと思われた.今後は,電気融合法やセンダイウイルス(HVJ)法を使って,脱核した細胞に体細胞の核を導入する技術を確立しなければならない.(平成15年10月20日受理)
- 著者名
- 安藤 陽子
- 巻
- 29
- 号
- 3
- 頁
- 221-229
- DOI
- 10.11482/KMJ29(3)221-229.2003.pdf