h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

思春期において不登校を呈した高機能広汎性発達障害について -適応障害との比較と臨床的検討-

 目的:思春期の不登校においては,その背景にある高機能広汎性発達障害に気づかれず,適応障害と診断されることがある.しかし,高機能広汎性発達障害と適応障害とでは,不登校を呈していてもその対応が異なる.そこで本研究では,両者の差異,及び高機能広汎性発達障害への対応について検討した.  対象・方法:2005年6月から2007年5月までに,川崎医科大学附属病院心療科外来を,不登校を主訴に受診した中学生・高校生116名(男性46名,女性70名).その内,米国精神医学会による「精神疾患の分類と診断の手引 第4版」(DSM-Ⅳ-TR)によって,広汎性発達障害と診断され,精神遅滞がないことを確認された高機能広汎性発達障害群27名(男性14名,女性13名),適応障害群26名(男性9名,女性17名)に対して,児童には自閉症スペクトラム指数日本版(以下AQ-J)を,親には高機能自閉症スペクトラム・スクリーニング質問用紙(以下ASSQ-R)を施行した.  結果:①AQ-JとASSQ-Rは共に高機能広汎性発達障害群の得点が有意に高く,適応障害群との鑑別に有用であった.②高機能広汎性発達障害のAQ-J陽性群とAQ-J陰性群では,下位項目の「注意の切り替え」「細部への注意」において有意差が認められず,共に高値であった.また,高機能広汎性発達障害のAQ-J陰性群は,「注意の切り替え」「細部への注意」において,適応障害群に比して有意に高値であった.③治療を継続した高機能広汎性発達障害群の17名のうち,15名が再び登校できるようになった.再登校の契機は,5名は目標を定めたことで,4名は転校したことであった.  考察:①不登校を呈した高機能広汎性発達障害と適応障害の鑑別検査として,他者評定式のASSQ-Rだけでなく,自己評定式のAQ-Jを組み合わせて使用することが有用である.②広汎性発達障害は社会性やコミュニケーションの障害が基本であるが,本研究においては,AQ-Jの総得点が低得点でも,「注意の切り替え」「細部への注意」の得点が高い場合は,広汎性発達障害の可能性があることが示唆された.③不登校を呈した高機能広汎性発達障害の場合は,「注意の切り替え」「細部への注意」の障害が,不登校という症状を引き起こしている可能性が考えられ,対応としては,どのような体験や出来事にこだわりが生じているのかを正確に把握し,環境の調整や視点を変えることが有効と考える. (平成19年10月22日受理)
著者名
桐山 正成
34
1
57-68
DOI
10.11482/2008/KMJ34(1)057-068.2008.jpn.pdf

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