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ラット進行性腎障害モデルにおけるPC細胞由来成長因子の発現調節の検討

 Progranulin(PC-cell-derived growth factor:PCDGF)は,悪性奇形腫PC細胞から分離された分泌型の成長因子であり,正常組織においては性腺,乳腺,肺,消化器,脳などの上皮細胞に発現が認められている.PCDGFは乳癌,卵巣癌などの腫瘍で強い発現が認められ,腫瘍新生に関与していることが知られている.また,一部では皮膚の創傷治癒や血管新生に関与しているとの報告もある.しかし疾患腎では,その発現および調節機構は未だ解明されていない.進行性腎疾患の原因は多彩であるが,最終的に不可逆性の腎不全に至る.我々は代表的な進行性腎障害モデルである5/6腎摘ラットを用い,PCDGFと疾患腎の関連を解析した.  PCDGF mRNA及び蛋白発現は,腎機能低下に伴い増加した.免疫染色では,sham-ope群では腎髄質にPCDGFの強い発現を認めたが,皮質では極わずかな発現しか認めなかった.しかし5/6腎摘モデルの8週の腎組織では,PCDGFは皮質の萎縮尿細管上皮細胞に強い発現を認め,in situ hybridizationでも同様の結果が得られた.さらに,16週の腎組織ではPCDGFの発現はより広範囲に認められた.慢性の腎低酸素が進行性腎疾患の一因であることから,我々は低酸素がPCDGFの発現を誘導するのかについて検討した.ヒト腎尿細管上皮細胞において,24時間の低酸素ストレス(5%,1%O2)は,PCDGFのmRNAと蛋白発現を上昇させた.  ラット5/6腎摘モデルでは,慢性腎低酸素症がPCDGFの発現を誘導している可能性が示唆された.腎障害の病期進行に伴いPCDGFの発現が増強していることから,PCDGFは進行性腎疾患の病態形成に関与しているのかもしれない. (平成19年10月17日受理)
著者名
荒川 さやか
34
1
33-45
DOI
10.11482/2008/KMJ34(1)033-045.2008.jpn.pdf

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