h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

胃癌におけるセンチ寝るリンパ節同定の臨床的意義に関する検討

 はじめに:胃癌でセンチネルリンパ節(SN)同定が可能であれば,縮小手術の可能性が広がってくる.SN同定のトレーサーは色素やRIが一般的に使用されている.しかし,RIは特殊施設を要するという欠点がある.また,色素はがん細胞に比して粒子径が微小で,がん細胞の流れを反映しているかという疑問が残る.われわれは,色素法(Indocyanine Green:ICG)に加え,新たなトレーサーである蛍光ビーズを使用し,SN同定の有用性について検討した.さらに,微小転移が根治性におよぼす影響について検討するために,過去の胃癌切除症例を用いてリンパ節微小転移と予後との関与について検討し,胃癌手術におけるセンチネルリンパ節同定を利用した縮小手術法を提起する.  対象と方法:2003年6月以降当科で胃癌と診断され,蛍光ビーズおよびICGを使用したSN同定に同意の得られた92例を対象とした.蛍光ビーズ・ICG併用法は31例,ICG単独法(前期)は29例,ICG単独法(後期)は32例であった.蛍光ビーズは,術前日内視鏡下に病変粘膜下に注入した.ICGは術中漿膜側から注入し,5~15分で緑色に染まったリンパ節および紫外線照射で蛍光発光したリンパ節をSNとした.ICG単独法において前期ではICG25mgを蒸留水5mlに,後期では3mlに溶解した.SN摘出後は標準郭清を行った.また,SN同定を行った症例の摘出リンパ節1,808個について転移の有無を検索すると同時に抗サイトケラチン(CK)抗体(AE1/AE3)を用いて微小転移を検索した.さらに過去の胃癌症例のうちpT1pN1,pT2pN1症例43例の摘出リンパ節1,475個およびpT2pN0症例46例の摘出リンパ節1,591個に対し抗CK抗体を用いた免疫組織染色による微小転移の検索を行い,予後との相関を検討した.  結果:早期癌に限るとSN同定率は蛍光ビーズ・ICG併用法で92%(23/25),ICG単独法(初期)で76.1%(16/21),ICG単独法(後期)で,96.1%(25/26)であった.SNの正診率は,蛍光ビーズ・ICG併用法で95.4%,ICG単独法(初期)で93.7%,ICG単独法(後期)では96%であった.後期症例で,リンパ節転移を認めた2例中1例はSNに転移を認め,1例はSNおよびSN station内に転移を認めた.SN stationに範囲を広げると正診率は100%となった.ICG単独法(後期)で微小転移は2例(12%)に認めたが,SN station外に微小転移を認めたのは1例(single cell)のみであった.さらに過去の胃癌症例で微小転移の有無と予後の間には有意差は認められず,微小転移が予後に与える影響は小さいと思われた.  考察:蛍光ビーズはICGと併用する事でSN同定率を上げることが可能であったが,脂肪の自己蛍光が妨げとなり臨床応用は難しいと考えられた.ICGを用いた早期胃癌におけるSN同定率および正診率は高率であるが臨床的には,SN stationに広げた郭清を行ったうえでの縮小手術が妥当と思われた. (平成19年10月15日受理)
著者名
平林 葉子
34
1
21-32
DOI
10.11482/2008/KMJ34(1)021-032.2008.jpn.pdf

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