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Online edition:ISSN 2758-089X

胃癌細胞株に対するtranilastの抗腫瘍効果とその機序

 Tranilastは抗アレルギ-剤として使用されているが,いくつかの腫瘍細胞で増殖を抑制する効果が報告されている.この研究では胃癌細胞株に対するtranilastの抗腫瘍効果について検討した.5種類の胃癌細胞株にtranilastを72時間作用させ,腫瘍細胞の増殖抑制効果をPremix WST-1 cell proliferation assayを用いて評価した.用いたすべての胃癌細胞株においてtranilastは濃度依存性に抗腫瘍効果を示し,IC50は80~240μMであった.次に,胃癌細胞株に抗癌剤(CDDP,5-FU,TXL)およびtranilastとの併用による増殖抑制効果の増強について検討し,抗癌剤単独投与と比較して抗癌剤とtranilastとの併用では腫瘍増殖抑制の増強を認めた.Tranilastによる胃癌細胞株の細胞周期に与える影響およびアポト-シスの誘導作用についてはFACS解析を用い,tranilast単独投与によりG0G1期細胞の増加を認め,TUNEL法ではアポト-シス細胞が観察された.CDDPとtranilastの併用では,CDDP単独投与と比較してsubG1期細胞の増加,アポト-シス細胞の増加がみられた.アポトーシス細胞の免疫染色では核の膨張,断片化が確認された.Western blotでは,p53,p21の発現増強がみられ,p21を介したG1停止による細胞増殖抑制がtranilastの主な作用と考えられた.Tranilastはヒト胃癌細胞株に対し単独でも抗腫瘍効果を認め,他の抗癌剤との併用による抗腫瘍効果の増強も認められ,tranilastは新たな抗腫瘍薬となることが示唆される.(平成19年10月15日受理)
著者名
山村 真弘
34
1
7-20
DOI
10.11482/2008/KMJ34(1)007-020.2008.jpn.pdf

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