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Online edition:ISSN 2758-089X

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腰椎椎間板ヘルニアの臨床症状に対する年齢の影響 ―ラット髄核細胞とマクロファージの共培養を用いた免疫学的検討―

 腰椎椎間板ヘルニア(LDH)の疼痛発生機序には,機械的圧迫因子と化学的因子の関与が挙げられる.機械的圧迫因子に関しては,前方圧迫要素,後方圧迫要素,不安定性の三つの組み合わせが考えられる.一方,化学的因子に関しては一酸化窒素(NO),炎症性サイトカインなどの関与が示されている.また,LDHの臨床像は若年者と高齢者では異なっており,この違いに関する化学的因子の解明は未だなされていない.  今回われわれは,LDHによって惹起される免疫炎症反応は年齢によって異なるという仮説を立てた.本研究の目的は,炎症細胞中のマクロファージに注目し,髄核細胞とマクロファージの相互作用によって生じるNOおよびサイトカイン産生能への,年齢が及ぼす影響を検討することによって,年齢によるLDHの臨床症状の違いの原因を解明することである.  実験には,生後3週齢,12週齢,32週齢のSprague Dawleyラット(雄)各15匹,計45匹を用いた.ラットの髄核細胞と炎症性マクロファージの単培養と両細胞の共培養を行い,培養開始2,24,48,72時間後の培養液中のNO値,および培養開始後7日目の培養液中の炎症性サイトカインを各週齢において測定し,年齢が及ぼす影響を単培養と共培養とで比較検討した.  その結果,NOに関して共培養では,培養開始24時間後から有意に上昇し,さらに週齢が増すにつれNOの有意の上昇を認めた.しかし単培養においては,髄核細胞,マクロファージ共に培養時間,週齢によるNO産生量に有意差を認めなかった.NO産生量から,LDHにおいては加齢に伴い炎症が強くなることが示された.  一方,サイトカインに関して共培養では,週齢を増すにつれてTIMP-1ならびにIFN-gammaが減少しており,IL-10は上昇していた.このTIMP-1の変化は,週齢によって侵害因子に対して髄核細胞の防御反応が変化していることが示唆された.さらに免疫応答の観点からIFN-gammaとIL-10に着目し解析を行った.IFN-gammaは週齢が増すと減少し,IL-10は週齢が増すと高値を示すというサイトカインバランスの逆転が起きていた.  以上から,ラットを用いた髄核細胞とマクロファージの共培養においては,加齢に伴い炎症および免疫応答が変化した.この結果はLDHの臨床症状が加齢に伴い変化するという臨床的事実に対する原因の一つを示したものと考える.(平成18年3月7日受理)
著者名
勝野 雷二郎
32
3
99-109
DOI
10.11482/KMJ32(3)099

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