Online edition:ISSN 2758-089X
早期子宮頸癌における Magnetic Resonance Imaging (MRI) の診断的意義について
組織学的に子宮頚部上皮内癌(90例),子宮頸癌Ia期(19例)およびIb1期(19例)と診断された128例を対象として,MRI所見と病理所見を比較検討した.MRIは1.0Tまたは1.5Tの装置を用い,術前に撮影されたT2強調画像(T2WI)とDynamic Contrast Enhanced MRI(Dynamic MRI)の読影を行った後,手術により摘出された頸部病巣の病理所見との比較により病変を検出する感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率および精度について検討した.これらについては婦人科医と放射線科専門医との間でも比較検討を行ったが,両者の診断精度に明らかな差はみられなかった.また1.0Tと1.5Tの装置間での診断精度に差はみられなかった.浸潤癌と非浸潤癌とを鑑別する診断精度は,T2WIで0.742,Dynamic MRIでは0.823であった.一方3mmを超える浸潤癌と3mm以下の病変を鑑別した場合の診断精度は,T2WIで0.875,Dynamic MRIでは0.947で,さらに5mmを超える病変を鑑別する診断精度は,T2WIで0.953,Dynamic MRIでは0.976となり良好な結果となった.次にT2WIおよびDynamic MRI所見を併せて診断した場合,両者で5mmを超える浸潤癌と診断した全例で実際に5mmを超える浸潤癌を認めており(11/11),逆に両者ともに浸潤なしと診断されたものに5mmを超える浸潤癌はなかった(0/73).またT2WIでは5mmを超える病変を認めていないが,Dynamic MRIで5mmを超える浸潤癌と診断された3例中2例は,実際に5mmを超える浸潤癌であり,Dynamic MRIがT2WIの偽陰性例を補正する可能性が示唆された.またT2WIで5mm以下の微小浸潤癌と診断した26例中17例が非浸潤癌であったが,そのうち12例はDynamic MRIで非浸潤癌と診断されており, 微小浸潤癌ではDynamic MRIがT2WIの偽陽性を補正する可能性が示唆された.以上よりT2WIとDynamic MRIの併用は早期子宮頸癌の非観血的な診断方法として有用であることが示された.
(平成16年3月10日受理)
- 著者名
- 田中 浩正
- 巻
- 30
- 号
- 1
- 頁
- 1-10
- DOI
- 10.11482/KMJ30(1)001-010.2004.pdf