h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

ヘモグロビンM-Hyde Parkの遺伝性に関する研究

 ヘモグロビン(Hb)異常症の一つでHb M症と呼ばれる一群に分類されるHb M-Hyde Park[b92His→Tyr]は,bグロビン鎖のアミノ酸置換によるメト化ヘモグロビン(ferri-Hb)の形成によってチアノーゼと溶血性貧血を呈する.今回,Hb M症の疑われる男児(発端者),父親(パキスタン人),母親(日本人)と兄のパキスタン人家系について,溶血液のHb分析,グロビンの構造解析や遺伝子解析を行い,発端者とパキスタン人の父親がHb M-Hyde Parkのヘテロ保因者であると診断した.  また,本家系と日本人3家系6症例について,bグロビン遺伝子群の7ヶ所,bグロビン遺伝子内部の5ヶ所の多型をPCR-RFLP(Polymerase Chain Reaction-Restriction Fragment Length Polymorphism)法,PCR-直接sequence法により決定し,比較した.この結果,bM-Hyde Parkの変異を持つalleleはパキスタン人と日本人では異なったパターンを示した.これはHb M-Hyde Parkの変異発生起源が,異なる民族間で独立したものであることを示唆している.  さらに,最近開発された遺伝子解析法であるSingle Step Extention Method(SSE:またはSNaPshot法)を導入し,bグロビン遺伝子内部の5ヶ所の多型と,Hb M-Hyde Parkの変異の決定を行った.この結果,本法はPCR-直接sequence法の結果と一致し,既知の変異や多型を決定する方法としては,ARMS(Amplification Refractory Mutation System)法やPCR-RFLP法,SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法に比べより簡便で優れた方法であると考えられた.(平成16年10月21日受理)
著者名
末次 慶收
30
2
123-135
DOI
10.11482/KMJ30(2)123-135.2004.pdf

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