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Online edition:ISSN 2758-089X

ラット急性膵炎モデルにおける血清サイトカイン及び膵でのサイトカインmRNAの発現 -FR167653による抑制効果の検討-

 ラット重症急性膵炎モデルを作成し,IL-1及びTNF合成阻害剤(FR167653)の投与による血清中のサイトカインの変化と膵臓でのmRNAの発現を検討した.Wister系ラットを使用し次の3群を作成.1)sham群,2)CDL(closed duodenal loop)群:十二指腸内にポリ塩化ビニルチューブを結紮固定して作製した急性膵炎群,3)CDL+FR群:急性膵炎群作製後よりFR1676531.5mg/kgを生理食塩水0.2mlに溶解させ15分毎に4回皮下投与した群.1群6匹とし,2,4,6時間後にそれぞれ犠牲死させ血液,膵を採取し,IL-1β,IL-6,IL-10の血清濃度と膵臓でのIL-1βmRNA,IL-10mRNAの発現を検討した.1)血清アミラーゼ及びリパーゼ濃度はCDL+FR群でCDL群に比し2,4hでやや低値を示した.しかし,その効果は6hで消失した.2)血清IL-1β濃度はCDL群で上昇を認めた.CDL+FR群では上昇が抑制された.3)血清IL-6濃度はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めたが,CDL+FR群ではCDL群に比し有意に低値を示した.4)血清IL-10濃度はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めた.CDL+FR群ではやや低値を示した.5)膵臓でのIL-1βmRNAの発現はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めた.時間経過と共に低下傾向を示したがCDL+FR群がより著明であった.6)膵臓でのIL-10mRNAの発現はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めた.2h値はCDL+FR群で高く,両群とも時間経過と共に低下傾向を示したがCDL+FR群がより著明であった.7)組織学的にはCDL+FR群で膵障害が軽度であった.  FR167653の投与により膵でのIL-1βmRNAは抑制される傾向にあり,血中IL-1βの産生が抑制された.IL-10はmRNAの抑制が血清濃度を低下させることに直結しなかった.しかしながら,FR167653の投与による炎症性サイトカインの抑制により膵組織障害は軽減され,膵炎治療に応用できる可能性が示唆された.(平成16年10月12日受理)
著者名
林 次郎
30
2
99-109
DOI
10.11482/KMJ30(2)099-109,2004.pdf

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