Online edition:ISSN 2758-089X
放射光(単色X線)微細血管造影法を用いた腫瘍微細血管の形態評価:放射線照射および血管新生関与因子投与の腫瘍微小循環系への影響
腫瘍血管の形態を,放射光微細血管造影法を用い観察可能とする生体実験系を作成する.また,血管新生関与因子の投与や放射線照射を行い,その形態変化や腫瘍循環動態を定量的に評価する.
ラットの下腹壁にラット乳腺腺癌を移植し,大型放射光施設SPring-8で発生される単色X線を用いた腫瘍微細血管造影を行い,同時に撮像した100μmのタングステン線をもとに最小描出血管径を同定した.また,移植2週後のラットを無処置群,放射線(RT)照射群,抗VEGFR中和抗体(AI)投与群,b-FGF(AP)投与群の4つのグループ(各n=5)にわけ,移植4週後の腫瘍微細血管構築の変化を放射光で観察した.
腫瘍血管の定量的評価法には,腫瘍血管に特徴的な所見でスコア化し評価する手法と,microvessel density(MVD)につき,画像解析ソフトを用い2値化処理にて解析を行う手法を用いた.さらに,2値化で得られたMVDと組織学的検討で得たMVDとを対比し,統計学的な解析を試みた.腫瘍循環動態の評価は,血管造影ダイナミック・スタディーで得た各群のtime-density curveをパターン化し,それらを分類した.
放射光微細血管造影法による最小描出血管径は,20~30μmであった.AP群は無処置群と比較し,腫瘍血管のスコア合計は高値を示し,MVDも高値を示した.AI群は無処置群と比較してスコア合計は低く,MVDも低値を示した.RT群ではスコア合計は高く,MVDは低値を示した.無処置群における2値化で得たMVDと組織像より得たMVDとの間に,統計学的に有意な相関関係を認めた.AP群の微細血管造影法によるtime-
density curveのパターンは漸減型を示し,AIとRT群では漸増型を示す傾向にあった.
今回の実験結果より,従来の血管造影法では観察不可能であった20~30μmの腫瘍微細血管を生体下に,観察することができた.また,腫瘍微細血管新生の観察や処置前後の形態変化を定量的に評価することが可能であった.(平成16年9月27日受理)
- 著者名
- 釋舎 竜司
- 巻
- 30
- 号
- 2
- 頁
- 83-97
- DOI
- 10.11482/KMJ30(2)083-97,2004.pdf