h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

外耳道骨折を伴った関節突起骨折の1例

 関節突起骨折に伴う外耳道骨折の報告は少なく,あまり知られていない合併症である.症例は80歳,男性.平成17年11月27日に犬の散歩中に転倒してオトガイ部を打撲し右耳出血がみられた.近脳神経外科にてX線で右関節突起骨折を認めたために,当院救急部を紹介受診し当科に対診された.神経症状はなく,オトガイ部に挫創,右耳前部に腫脹,右外耳道内から少量の出血を認めた.オトガイ部を縫合し,外耳道内にボスミンガーゼを挿入した.追加のX線検査にて下顎正中部骨折も認めたが,高齢で義歯の咬合不正がなく保存的に加療した.CT検査では下顎頭は粉砕状で内側へ転位し,外耳道前下壁骨折を認めた.聴力検査では骨伝導力の低下はみられなかった.MRI検査では関節円板に形態的変化はなく,転位骨折した下顎頭との関係は正常であった.また開口により関節円板と下顎頭は良好な位置関係を保ったままで前方移動していた.治療は保存療法後に開口練習を継続している.関節突起骨折の時には外耳道の皮膚損傷の有無を確認し,損傷が見られた時には止血と外耳道狭窄防止を兼ねて外耳道へのパッキングが重要である. (平成18年9月7日受理)
著者名
畑 毅,他
33
1
49-55
DOI
10.11482/2007/KMJ33(1)049-055.2007.pdf

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