h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

db遺伝子による肥満糖尿病発症の分子機構の解明 ―db遺伝子負荷が膵β細胞機能に及ぼす影響―

 レプチン受容体異常という遺伝的背景を持つdb遺伝子ホモ接合体(db/db)マウスは,摂食過剰が高度の肥満と代謝異常を示し,膵β細胞機能不全に陥り糖尿病を発症するため肥満2型糖尿病モデルマウスとして汎用されている.db遺伝子ヘテロ接合体(db/+)マウスでは糖尿病は発症しない.肥満糖尿病発症に関連するdb遺伝子が膵β細胞機能に及ぼす分子機構を明らかにするため,db/db,db/+,+/+マウスにおける膵β細胞関連遺伝子の発現様式を特異的に解析し,比較検討した.8・12週齢の雄のdb/db,db/+,+/+マウスを用いて,体重,空腹時血糖およびインスリン値を測定した.また,Laser Capture Microdissection(LCM)法にてマウスの膵ラ氏島コア領域を採取し,内分泌,増殖,アポトーシス等における主要遺伝子の発現プロフィールをSybr Greenを用いたReal time RT-PCRにより比較解析した.+/+マウスを正常コントロールとした.8・12週齢のdb/dbにおいて体重・空腹時血糖・インスリン値は他群より有意に高かった.12週齢の膵インスリン含量はdb/dbマウスで有意に減少しており,db/+マウスでは他群と比較して有意な増加を認めた(5.1±3.3,58.0±31.7,24.4±15.4ng/islet,respectively,p<0.05).LCMとReal time RT-PCR法で得られたインスリン遺伝子発現をみると,8週齢のdb/+で,insulinⅡ遺伝子のより顕著な発現を認めたが(db/+:9.57±3.96,db/db:1.72±0.96,p<0.05),12週齢ではdb/dbにおいてもdb/+と同等に増加していた(db/+:7.86±3.56,db/db:6.97±3.78).8週齢のdb/dbにおいて,増殖促進関連遺伝子であるcyclin EとERK1およびアポトーシス促進関連遺伝子であるCADの発現増加を認めるものの,12週齢では増殖促進関連遺伝子の発現は低下し,アポトーシス促進関連遺伝子の発現はさらに増加していた.一方,アポトーシス抑制に働くbcl-2遺伝子の発現は,他群と比較してdb/+で有意に増加していた.本研究結果より,db/dbマウスの糖尿病発症には膵β細胞アポトーシスの亢進と増殖抑制によるβ細胞量の減少が関与することが強く示唆された.またdb遺伝子ヘテロ接合体(db/+)マウスにおいてはアポトーシス抑制機構が働くこと,インスリン遺伝子高発現といった糖尿病発症を抑制する代償性機構が存在することが明らかになった.db/dbマウスにおける代償性機構の消失の分子メカニズムの解明はヒト2型糖尿病における膵β細胞機能不全の機構解明に結びつくものと考えられる. (平成18年8月30日受理)
著者名
菅田有紀子
33
1
11-21
DOI
10.11482/2007/KMJ33(1)011-021.2007.pdf

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