h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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自殺企図症例の手段の危険性と身体的重症度の検討 ―自験例からの検討―

 【背景】自殺企図症例において,重症未遂者は軽症未遂者に比べて狭義の精神障害の割合が高い傾向が指摘されている. 【目的】自殺企図症例において,その「手段の危険性」と「結果としての身体的重症度」を指標として臨床検討を試みた. 【対象】1992年4月から2001年6月までの期間に,自殺企図により川崎医科大学附属病院精神科に入院し著者が治療に直接関与した患者延べ56例と,自殺企図により当院他科に1週間以上入院となり著者がリエゾン精神医学的関与を行った18例を抽出し,検討を加えた. 【方法】当科入院56例とリエゾン18例の合計74例について後方視的に調査を行った.企図手段の致死性から危険度を判定して「高危険群」と「低危険群」の区別を試みたが,判定困難な事例が必ず存在する事が確認され「判定困難群」を設定した.身体的重症度は「重症群」と「非重症群」に区別した. 【結果】危険度の分類では「高危険群」は42例,「低危険群」は18例,「判定困難群」は14例,となり,重症度の判定では「重症群」は38例,「非重症群」は36例,となった. 各群において診断上「狭義の精神障害」が占める割合は「高危険群」は85.7%,「低危険群」は55.6%,「判定困難群」は85.7%であり,「重症群」は84.2%,「非重症群」は72.2%であった.  「狭義の精神障害」の占める比率の比較では「高危険群」と「低危険群」の間には統計上X2検定で有意差を認め(P=0.011<0.05),「高危険群」と「判定困難群」め間には有意差はなかった(P =0.685).一方,「重症群」と「非重症群」では有意差は認めなかった(P =0.21). 【考察】身体的重症度よりも手段の危険性の方が,狭義の精神障害の占める比串と相関しており,自殺企図においては身体的重症度のみならず企図手段の危険性の判断が極めて重要であることが示された.危険性の判定においては「判定困難群」が必ず存在する事が確認され,「判定困難群」は「低危険群」よりも「高危険群」に類似したグループであると考えられた.                          (平成14年8月23日受理)
著者名
澤原 光彦
28
3
143-155
DOI
10.11482/KMJ28(3)143-155.2002.pdf

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