h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

マウス肢芽のプログラム細胞死における遺伝子発現の解析

 胎生期の肢芽形成時におけるプログラム細胞死の分子機構について,ゲノム解析が進んでいるマウスの胎子を用いて研究を行った.まずマウス肢芽指間の細胞死の時期をNileblue染色,HE染色, TUNEL法を用いて検討した.指間の細胞死は妊娠11.5日目から始まり, 13.5日目にそのピークがみられた.次に11.5日目および13.5日目に後肢の指間組織をメスで切り出しRNAを抽出した後, DNA Expression Arraysを用いて1176種類の既知遺伝子の発現パターンを解析した.その結果13.5日目に5種類の遺伝子発現の上昇を認めた.また,これらのうちホメオボックス遺伝子であるMsx2やinsulin-like growth factorbinding protein 2 (IGFBP2)及びapolipoprotein E (apoE)が13.5日目に上昇していることをRT-PCR法で確認した.さらにこれらの遺伝子の空間的な発現パターンを解析するために, whole mount in situ hybridizationを行ったところ, Msx2とIGFBP2は既報通り指間部位に一様にその発現を認めたが, apoEの発現パターンはそれらとは異なり, Nileblue染色と極めて似た顆粒状の染色パターンを示した.このことは, apoEがNile blue 陽性の死細胞中に発現しているか,あるいは死細胞を貪食したマクロファージ系細胞に発現しているかを示唆している.そこでTUNEL法で調べたところ,その発現は死細胞にではなくマクロファージ様細胞に認められた.また5-bromo-2' -deoxyuridine(BrdU)処理で細胞死を抑制したマウスの肢芽ではNile Blue陽性細胞が減少するとともにapoEの発現も減少した.この結果からapoEがマクロファージ様細胞に発現され,それが死細胞の増加によって誘導されることが示唆される.すなわちapoEの貪食過程への関与が考えられた.                                  (平成13年12月25日受理)
著者名
石川 博康
28
1
33-42
DOI
10.11482/KMJ28(1)033-042.2002.pdf

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