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Online edition:ISSN 2758-089X

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ヒト精巣セミノーマ細胞株に対する低酸素培養の影響

 腫瘍細胞の低酸素状態は血管新生因子等を介して細胞の悪性形質獲得に重要な役割を担っていることが判明している.今回,ヒト精巣セミノーマ細胞株を用い,血管新生因子を中心に,低酸素培養の影響を検討した.実験に供した細胞株には当教室で樹立したヒト精巣セミノーマ細胞株(JKT-1)とその高転移株(JKT-HM)を用い,低酸素培養(1 %02)での増殖曲線・形態・vascular endothelial growth factor-A (VEGF-A)産生・血管新生因子を含む種々の遺伝子発現・アポトーシス・細胞周期について常酸素培養(21% 02)と比較した.両株ともに,低酸素培養下では増殖が抑制され細胞は大型の紡錘形となった.培地中へのVEGF-A産生は低酸素培養下24時間で増加,遺伝子発現では, VEGF-A, -Bならびに-Dが2日目までやや発現の亢進が見られ,その後減弱を示したが, VEGF-Cは発現の亢進が持続した。hypoxia inducible factor-1 (HIF-1)はメッセージレベルでは変化を認めなかった.また解糖系酵素と共にストレス蛋白であるHeat shock protein (HSP) 70,HSP90, cyclin-dependent kinase inhibitorsであるp21, p27, p15,接着因子のCD44,vimentinの発現亢進を認めた.細胞周期のFACSによる解析ではG1期への集積を示していたが,アポトーシスは認めなかった.結果として他臓器細胞株と同様に,ヒト精巣セミノーマ細胞株においても低酸素培養において血管新生因子の発現亢進が認められ,なかでも培養早期のVEGF-Cの発現亢進は特徴的であり,本因子が,近年リンパ性転移に深く関わる因子として注目されている点を考慮すると,臨床的にセミノーマに多く認められるリンパ性転移誘導における低酸素状況の検討が今後必要であると思われた.                               (平成13年12月20日受理)
著者名
藤井 智浩
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1
23-31
DOI
10.11482/KMJ28(1)023-031.2002.pdf

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