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マウス胚/胚体外組織におけるインドールアミン酸素添加酵素(IDO)と肝型トリプトファン分解酵素(TDO)の共発現

 Indoleamine 2, 3 -dioxygenase (IDO)とTryptophan 2, 3-dioxygenase (TDO)は必須アミノ酸のひとつであるトリプトファン(Trp)を酸素化する反応を触媒し,N-ホルミルキヌレニンを産生するTrp分解酵素である. 1998年にDavid Munn らはIDOが正常妊娠時に胎盤で局所的にTrpを枯渇させ,その結果母体側の免疫拒絶を担うT細胞が機能不全に陥るという報告を行った.しかしIDOの役割は十分に解明されていないことから,マウス胚/胚体外組織を用いてIDO発現 (Trp分解酵素活性, IDO蛋白, IDO mRNA)の時間的推移を解析した. Trp分解酵素活性は,受精後5.5日目には非常に低いものの,胚/胚体外組織で検出でき,その後急激に増加し24時間後の6.5日目にはピークに達し,次いで次第に減少した.IDO蛋白は妊娠初期には認めず,妊娠8.5日目から12.5日目に発現を認めた. IDOmRNAの発現は8.5日目以前は非常に低いものであったが, 9.5日目にピークを示した.Trp分解酵素活性の方が, IDOの蛋白質およびmRNAの発現よりも早い時期に上昇するという結果が得られた.そこで妊娠初期に高発現しているTrp分解酵素が如何なるものかを解明するために,もう1つのTrp分解酵素であるTDOに着目し検索を行ったところ,TDOはmRNAまた蛋白レベルの双方で,妊娠初期から胚/胚体外組織で強力に発現していた.それに加えて,妊娠初期のTrp分解酵素活性はIDOの特異的な阻害剤である1-methyl-Trpで抑制されなかった.以上のことから,妊娠初期に発現しているTrp分解酵素活性はIDOではなくTDOであることが示唆された. これまでTDOは成体の肝臓でのみ特異的に発現していると報告されているが, TDOの発現が肝臓以外の組織中に初めて確認された.妊娠初期の組織中でTrpを枯渇させるのに, IDOよりもむしろTDOが強力に働いていることを示唆する結果を得た. 妊娠初期にはTDOがTrp濃度を強力に低下させ卵の着床を導くが,中期に至って胎児への大量のTrp供給が必要とされるようになると, Trpを枯渇させずにIDOが胎盤局所での免疫抑制を行う,という役割分担をTDOとIDOで行っているのではないかと考察した.                                 (平成13年11月19日受理)
著者名
田中 幸子
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1
1-9
DOI
10.11482/KMJ28(1)001-009.2002.pdf

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