h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

摂食障害患者家族における「感情表出」の特徴 ―カンバウェル家族面接法を用いて―

 家族の「感情表出(Expressed Emotion : EE)」は、精神障害の患者に対して家族が表出する感情の内容を概念化し評価したものである。 著者は、摂食障害患者の家族に対しカンバウェル家族面接(Camberwell Family Interview : 以下CFIと略記する)を用いてEEの評価を行い、その特徴を検討した。・対象および方法 対象は、1998年4月から2000年3月にまでに川崎医科大学精神科を受診した25人の摂食障害患(16人は神経性食思不振症:以下ANと略記する、9人は神経性大食症:以下BNと略記する)の母親である。これらの母親に対しカンパウェル家族面接に摂食障害の症状項目加えてEEの評価を行った。・結果1. 25人のうち11人(44%)が高EEを示し、いずれも高い「過度な情緒的巻き込まれ (emotional over-involvement : 以下EOIと略記する)」を認めた。AN患者の母親群と BN患者の母親群間では、「批判コメント(以下批判と略記する)」と「EOI」の表出に差は認められなかった。 2.この研究の対象群と日本の精神分裂病患者の家族と躁うつ病患者の家族を比較した場 合、対象群の母親は低い「批判」と高い「EOI」を示した。 3.対象群の母親のEEの評価尺度の分布をイギリスとオランダの摂食障害の母親と比較し たところ、他の2力国の母親に比べて、対象群の母親では「批判」の表出が低かった。・考察 高い「EOI」を示した母親の特徴が、従来述べられてきた摂食障害の家族の特徴と一致すると考えられた。日本の他の精神障害患者の家族との比較で、対象の母親群が低「批判」と高「EOI」を示した要因について、摂食障害患者の痩せなどの危機的な身体症状が母親の批判的な言動を抑制し、懸念や心配の結果過保護的な行動や過剰な情緒的反応を引き起こしている可能性や、ライフサイクルの観点から、摂食障害患者の多くが親からの過保護行動を受けやすい年代である思春期・青年期に属することなどが考えられた。 また、3国間の母親のEEの評価尺度の分布比較では、社会文化的な要因として、欧米と日本における母親の子どもに対する養育態度の違いが反映している可能性が考えられたo そして本邦においては、摂食障害患者の治療に際しては、母親の高い「EOI」に配慮した家族への介入が必要であることを述べた。           (平成13年9月3日受理)
著者名
吉田 昌平
27
3
219-230
DOI
10.11482/KMJ27(3)219-230.2001.pdf

b_download