h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

ラット胎仔肝ミトコンドリアの membrane permeability transition と酸素ストレス時における生物学的意義

 胎児の組織は出生前後に著しい酸素ストレス下におかれる.胎児から新生児への適応過程においてはこの酸素ストレスに対して何らかの生体防御機構が存在することが推定される.新生児肝においては少ないスーパーオキサイドディスムターゼやカタラーゼなどの抗酸化酵素が出産時や酸素ストレスに対する防御に関与していることが知られている.しかし,これらの抗酸化酵素が誘導される前(出生前後)に酸素ストレスに対してどのような防御機構が存在するかということに関しては不明である.最近の研究により,酸素ストレスが細胞のアポトーシスを誘導することが明らかとなった.胎児肝のミトコンドリアでは電子伝達反応に関与する構成成分が未成熟であり,様々な点で成人のものとは異なることが報告されている. 本研究では,胎仔,新生仔および成獣ラットの肝ミトコンドリアを用いて,その代謝特性と酸素ストレスによるアポトーシスとの関係を解析し,周産期医学的意義を考察した.その結果,胎仔肝のミトコンドリアではmembrane permeability transition (MPT)が起こりにくく,シトクロームCが流出されず,酸素ストレスによる肝実質細胞のアポトーシスが回避される機構が存在することが判明した.胎仔の他の臓器でも類似の機構で酸素ストレスに抵抗している可能性が考えられる.ミトコンドリアはエネルギー産生を介して細胞の生を保証すると同時に,アポトーシスを介して細胞の死を演出している.胎仔のミトコンドリアは成獣ラットのそれに比べて組織のミトコンドリア依存性アポトーシスを抑制するという特性がある.この機構が出生直後の酸素ストレスに対する防御反応に大きな役割をはたしているものと考えられる.              (平成13年8月1日受理)
著者名
吉田 孝
27
3
181-191
DOI
10.11482/KMJ27(3)181-191.2001.pdf

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