h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

リウマチ性自己免疫疾患における fetal microchimerism の検討

 リウマチ性自己免疫疾患(rheumatic autoimmune diseases : RAD)と慢性graft-versus-host disease (GVHD)には,免疫学的所見,臨床症状において共通点が多く,古くからその病因の近似性が指摘されている.近年,妊娠中に移行した胎児由来細胞が出産後の母体に生着する現象が見出され(fetal microchimerism : fMC) ,このfMCによるgraft-versus-host反応が自己免疫疾患の病因に関与する可能性が議論されている. 本研究では,Y染色体特有の配列であるDYZ 1の検出を,男児出産歴のある全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus : SLE),シェーグレン症候群(Sjogren'ssyndrome : Sjs),および全身性強皮症(systemic sclerosis : SSc)患者に対して行い,RAD患者におけるfMCの頻度を検討した,加えてfMCの遺伝的背景を検討するため,SSc患者のHLAクラスⅡ遺伝子型を検索した.結果,男児出産歴を有するSSc患者では,対照に較べ有意に高頻度にDYZ 1配列が検出された.一方,Sjs患者のDYZ1配列検出率は対照と有意差はなく, SLE患者からはDYZ 1配列は検出されなかった.SSc患者のHLAクラスⅡ遺伝子型はDRB 1 *0101, DQB 1 *0501が日本人全体の頻度と較べ,高頻度に検出されたが, DYZ 1検出群及び非検出群との差異は認めなかった.臨床像との比較では, BarnettⅢ型症例や高度な内臓病変を伴う症例においてDYZ 1配列が検出される傾向が見られた.これらの結果から, f MCがRADの中でも特にSScに高頻度であり,その臨床像はGVHDと類似すると考えられた.        (平成13年4月4日受理)
著者名
宮下 祐子
27
2
111-121
DOI
10.11482/KMJ27(2)111-121.2001.pdf

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