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Online edition:ISSN 2758-089X

Hypertonic Saline Dextran (HSD) の循環動態に及ぼす影響 ―特に一酸化窒素の関与に関する研究―

 7.5% NaCl + 6 %低分子デキストラン溶液(HSD)は,出血性ショックや熱傷ショックに対し少量bolus投与で心拍出量を増やし末梢循環改善作用のあることが知られている.この作用機序としては循環血漿量増加作用,末梢血管拡張作用,心収縮性増強作用などが考えられているが,その詳細は明らかにされていない.本研究ではHSD投与後にみられる血行動態と心機能の変化に,血管内皮由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)の関与について検討した. 12頭の雑種成犬をコントロール群とNO合成酵素阻害薬であるL-NMMAを投与したL-NMMA群の2群に分けた.コントロール群は生理食塩液100 ml のみを, L-NMMA群は1mg/kg を生理食塩液100 ml に溶解しそれぞれを30分で投与した.その後にUSD 4 ml/kgをbolus投与し,10分間の血行動態とbolus投与前後の心収縮性(収縮末期圧一容積関係)を比較検討した. L-NMMA投与前後ではコントロール群に比べ血管抵抗が有意に上昇したが,その他の血行動態は両群で差がなかった。HSD投与後の血行動態の変化では, L-NMMA群で心拍数が10%程度増加する以外は血管抵抗も含め両群で差がなかった.またHSD投与前後では心収縮性も血中NO濃度も両群で差がなかった. 今回の検討結果では,HSD投与10分間にみられる血行動態の変動はL-NMMAの投与で抑制されなかった.従ってHSD投与により出現する血行動態の変動には,NO以外の血管拡張因子の関与の可能性があると考えられた.      (平成11年10月30日受理)
著者名
河野 匤彦
25
4
297-306
DOI
10.11482/KMJ-J25(4)297-306.1999.pdf

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